SANCTUARY MECHANIC BRAND - Cam-Chain Guide
過酷な環境下でも耐え得るゴム
耐油性も求められるとなるとシリコン・ニトリル・エチレンプロピレンジエン・フッソ等が対象となる材質になります。また、ゴムには硬さの規格があり純正新品ガイドの硬度を測定して知る事も重要でした。 予想し得る数種のゴムで試作をしテストを繰り返す。最終的にはコスト度外視で、耐熱・耐摩耗性、耐油性に優れたゴムを用いて生産しました。
意外なマテリアルだった芯金
2024年、エビスサーキットでテスト走行。 事前にストリートを7,000kmほど走らせており、その段階での状態に問題が見られなかった事から締めのテストとしてエビスのコ-スを全開走行。「とにかくエンジンを痛めつけてくれ」と伝えて走らせたライダーは國川浩道。その後、エンジンを分解して判明したのはゴム表層の異常摩耗と芯金の反りであった。 カムチェーンテンショナー側のリアガイドは大きくのけぞる様に反り、プライマリーチェーンガイドは芯金が真っ二つに切れていた。 テストの結果は失敗。 芯金を軽視していた事に気づかされ純正の芯金材質をしっかり分析する事になる。ロックウェル硬度試験で表面高度を確認し、スパーク放電発光分光分析で金属の元素含有量を測定。判明した材質は普段馴染みのないマテリアルでした。
サーキットでしか壊れないからこそ欠かせないサーキットでのテスト走行
試験結果に基づき芯金材を変更して製作。ゴムも最高スペックのもので硬度も変更して成形。ストリート走行を重ねる事はもちろん重要だが、どうしてもストリートでは壊れる所まで行かない。こうしてトライした2回目のサーキット走行テストは筑波コース2000。 2025年7月、酷暑の真夏日に延べ3本の走行を行った。同じく「エンジンを徹底的にいじめてくれ」と頼んだライダーは上田隆仁。ストレートエンドをレッドゾーンまで引っ張り切った後の急激なエンジンブレーキ、これを繰り返した。 テスト走行終了後、分解して見た4つのガイドが全て極めて健全な状態である事を確認。その後もエンジンを組み直し、念のためにとストリート走行で距離を伸ばして再度分解。エンジンを何度も分解しては組み立てる、心身共に大きな消耗を伴うテストでした。
およそ2年掛かった開発は終了。
ゴム成形と金型の業者様ならびに硬度試験と放電分析を担当してくれた業者様に、この場を借りてお礼申し上げます。仕上げ精度厳重注意の元、現在は量産工程が進行中です。